History
595年4月、淡路島の海岸に打ち上げられた一本の流木。それは日本に伝わった初めての香木として、日本書紀にも記されています。その香木は今なお枯木神社で御神体として祀られ、今日まで続く淡路島とお香との深い縁の始まりでした。それら史実は、島が香りとともに歩んできたこと。そして香りに独特の価値を見いだしてきた文化背景を、今を生きるわれわれに伝えています。
淡路島で本格的に線香づくりがはじまったのは、1850年にまで遡ります。天然の良好に恵まれ、廻船問屋が賑わいを見せる一方、冬の時期には港が閉ざされ、当時は多くの住民が生活苦に喘いでいました。そんななか、冬枯れ対策として始まったのが線香づくりでした。くしくも海から吹き付ける季節風は、線香製造に欠かすことのできない乾燥作業に最適だったのです。そしてその創成期を支えたのは、内職を担った多くの女性たちでした。
今日では淡路島の地場産業にまで発展した線香産業。代々にわたって技術を承継しながら独自の発展を遂げながら、線香づくりの一大生産地を形成しています。町を歩くとどこからともなく漂ってくる線香の香り。それは線香産業が島の風土を生かし発展してきたことを今に伝える、先人から受け継いできた誇りです。
われわれはときに競い合い、あるときは手を携え、研さんを重ねながら線香産業に新しい息吹を吹き込んできました。その結果、現在では地域で暮らす4分の1ものひとが、なんらかの工程で線香製造に関わっています。狭い地域のなかで育まれたコンパクトなものづくりは、早くからエシカルな取り組みとして注目され、今日に至るまで、線香文化の発信地としてその名が知られています。
従来からの仏事用にとどまらず、今ではホームフレグランスとして、あらたな用途の線香を淡路島からお届けしています。オリジナル商品以外にも、国内外の有名ブランドとのコラボレーションを通じて、線香の新たな魅力を発信し、革新とともに発展を続けているのが淡路島の線香産業です。Awaji Encensの名前とともに、我々の挑戦はこれからも続きます。